フリダシニモドル

2012年10月28日 16:29

 

 
 
――俺の中で、全てが終わった。
 
――俺の中で、勝敗がついた。
 
――俺の中で、全てにケリがついた。
 
確かに、俺はこいつに負けた。全力を出した。はずだった。
 
だが、最後までその背中を追い越すことが出来なかった。
 
追い越したかった。
 
過去と決別するために。
 
――俺の過去。
 
1人の少女。
 
守りたかった。
 
守られていた。
 
閉ざされた、未来。
 
運命に抗った。運命に挫けた。運命を呪った。
 
――運命なんてものを作り出した愚者を潰してしまおうと思った。
 
そのために越えなければならなかった存在。
 
俺の弟。
 
身に余る巨大な力を宿した故に、孤独までも抱えることになった青年。
 
孤独を破り、全てを守る力を手に入れた青年。
 
こいつも、戦った。
 
己の運命と。
 
そして、俺は。
 
そんな脆弱な完璧人間の未来のために。
 
そんな脆弱な完璧人間に追いつくために。
 
――消える。
 
これで、1勝1敗。
 
そして一旦俺の勝ち逃げだ。
 
決着は、またいつか。
 
自分の身体を。
 
青年の生命に。
 
変換。
 
脇に立っている少女の顔は悲しみに曇っている。
 
――そんな顔すんじゃねェよ。
 
――大切な人を取り戻してェんだろ。
 
俺の全てを青年にぶつける。
 
それはつまり、死。
 
やはり、走馬灯というものは見えてしまうもので。
 
生を捨てる青年が死にゆく合間。
 
死に向かいつつある青年が生を取り戻す合間。
 
消えかけた青年は、過去に思いを馳せる。
 
――悲しみと絶望の過去(ヒャクネンマエ)へ。