00.空いた席に座っていた者
2013年01月15日 02:42
秋になるとその風景の趣がよりいっそう深くなる、紅葉と温泉で有名な村、ユクモ。
近くのハンターが集っては、渓流、孤島、水没林など、いろいろな場所へと狩猟に出かける。
そんなユクモ村の集会所、浴場がある部屋と同じ部屋にクエストを受注するカウンターがあるのだが、その部屋とは別に、基本的に待合室や食事の場として使われている部屋があった。
そこには今日も数人のハンターが集っており、各々の装備や道具を確認しながら、今日はどこに行く、今日は何を狩る、とハンターならよく交わす話をしていた。
少し昔、とはいってもほんの二、三年前だが、かなり腕の利いた四人組のハンターがいたそうな。
彼らはこの村のハンターの間でもかなりの人気者で、どんなクエストでも必ず成功して帰ってきていたそうだ。
その四人の特徴を、当時も一緒にいたほかの連中に聞いてみたところ。
――サドで美人で、いつもメンバーにちょっかいを出していたお姉さんハンター。
――自信家だが押しに弱く、いつもメンバーにいじられていたお坊ちゃま弓使いハンター。
――内気で泣き虫で、それでもみんなのために全力を尽くした雪兎少女ハンター。
――規格外で最強で、それでいて誰にでも優しかった、村の『英雄』である、双刀ハンター。
皆が口を揃えて言う。
彼らがいた時は、本当に楽しかった、と。
さて、先程紹介した例の食堂だが、いつも四人分の席が必ず空いていた。
それは既に暗黙の了解で。
そこには既にいない誰かがいたことを意味していて。
きっとまた帰ってくることを信じていて。
誰もがその時をずっと待っていて。
これは、一つに小さな村で出来た、ちっぽけでささやかで、それでいていろいろなものが詰まった、狩人たちの物語。