3.とある厄日の数奇な出会い
2012年10月28日 17:22
あれから2年とちょっと。音姉もだいぶ明るくなり、おかげで朝倉家の日常はすっかり明るくなった。
……のはいいんだが。
「えへへ~」
「ふ~んふふ~ん♪」
「……むぅ」
「……」
えと、どうすればよかとですか?
右手には音姉が嬉しそうにしがみつき、左手には由夢が、俺の左手と、義之の右手をとって鼻歌を歌っている。さくらさんは、音姉の横から、うらやましそうに俺の手をまじまじと見ている。なんで?
「ねぇ音姫ちゃん、そろそろ離れてくれないと、光雅くん困ってるよ?」
「……光くんは、いやなの?」
光君はそんなこと思ってないよね?とでも言いたそうな目で、そんなことを訊いてくる。いやぁ、あはは。
「……いや……まぁ、その、嫌……ってわけじゃ、ないけど……」(苦笑)
「なら大丈夫!」
「……」(黒笑)
な……なんかさくらさんからすげぇ殺気みたいなのを感じるんですけど。
音姉、音姉。そんなにしがみつかないで!なんか嫌な予感しかしないんだけど!
「(義之、何とかしてくれ!的な視線)」
「(諦めたほうがいいんじゃない?的な視線)」
はぁ~。
てか音姉、なんか最近よく俺の動作を束縛して嬉しそうにしてない?そうなの?音姉ってそんなSっ娘なキャラなの?
実は今、純一さん以外でお出かけしております。え?何で純一さんいないかって?……まぁ、ご想像にお任せします。
(べ、べつにかったるいとか言ってたわけじゃないぞ……?違うんだぞ?)
あぁ、空が青いな~。(現実逃避)
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お昼ごろ。
現在地、とあるファミレス。
子供3人はお子様ランチを注文。雑談に花を咲かせております。
「義之、お前宿題やった?」
「宿題?なんかあったっけ?」
だろうな……。
「算数の復習プリントと、漢字練習ノート1ページだったろ?」
「う~ん?なんもやってね」
ちなみに俺は死ぬ前は中学3年だったため、その記憶はそのまま残っているし、勉強は苦手ではないため、小学校の勉強なんて面白くもなんとも無い。
だが中学校に入ったら英語がある。
あれはだめだ。単語が多いから覚えづらい。
「だめだよ、義くん。宿題はちゃんとしないと」
「わたしはやったよー」
「さすが由夢ちゃん、えらいね~」
由夢の嬉々とした笑顔に、さくらさんが褒める。
俺と義之は3年生、由夢は2年生、音姉は5年生である。音姉はお姉ちゃんぶるのが好きなようだ。
「光雅はやったの?」
「もち。算数大変だったぞ。問題数多かったし」
「うっそ、頼む、見せてくれ!」
「義くん!」
音姉の喝。
「ごめんなさい……」
音姉は怒ると怖い。
お姉ちゃんモードに入ると、俺にも容赦がなくなるもんだから、自然と日常生活が模範的なものになってしまう。
お、やっべ、トイレいきてぇ。
「ちょ、俺トイレいってくる」
「「いってらっしゃ~い」」
音姉と由夢が返事を返してくれた。
事件が起こったのは、その後だった……。
~???side~
なんでこんなことになっちゃったんだろ。
私は家族でお出かけして、お昼にこのファミレスに入ったの。お父さんも、お母さんも、私も、笑顔だった。
でも、出入り口から入ってきた10人くらいの男の人たちのせいで、その笑顔はなくなっちゃった。
――バンッ!!バンッ!!
男の人の1人が鉄砲を2回撃った。聞こえるのは、男の人たちの罵声、お客さんたちの悲鳴、泣き声。
「ここは俺たちが占拠した!テメェら全員俺たちの指示に従ってもらおう!」
「オルルァ!テメェら全員店の端に寄りやがれ!こっちだこっち!」
……。
しばらくの沈黙。
「なぁ、念のためにこの中から1人人質取っといたほうがいいと思うんだが」
「そうだな。なら、子供がいいだろ。暴れないし楽だし」
「了解」
……。
「お前、こっち来い!」
男の人の集団の1人が私を指名してきた。……怖いよ……!
「やめろ、この子だけはやめてくれ!人質には私がなる。だから――」
「うるせぇ!黙ってろ!」
男の人がお父さんを蹴り飛ばす。
「ぐはっ!」
「「お父さん!!」」
「お前はこっちだ」
お願い……誰か助けて……!
そんなことを考えていると。
――がちゃっ。
トイレから1人私と同い年くらいの男の子が。近くには犯人が1人。
「おおっとぉ。まだ1人いやがった。」
犯人は懐から鉄砲を取り出すと、男の子に向ける。……お願いやめて!
「こいつは血祭りにあげてやる……」
でも、男の子は動じない。そればかりか――
「はぁ~、メンドクセェ……」
明らかに男の人たちを挑発していた。
~光雅side~
ふぅ~すっきりしたぁ~。用を済ませて手を洗っていると――
――バンッ!!バンッ!!
なんか音が2回。すっげぇ静かになった。
セレモニーかなんか始まったのかな?
そろそろ注文した飯来てんのかな?なんて考えながらドアを開けて外に出ると、
「おおっとぉ。まだ1人いやがった」
何々?何が起こってんの?
?この野郎、銃持ってやがる。ってか、……俺?
「こいつは血祭りにあげてやる……」
これは、強盗って奴か。しゃ~ね~なぁ。
「はぁ~、メンドクセェ……」
挑発的な笑みを浮かべてやった。犯人は10人といったところか。
「あぁ~?このクソガキ、自分の状況分かってんのか?」
ゲス顔がうざい。うざすぎる。流石に腹が立ってきた。
「ほら、死ねよ」
引き金に指を掛ける、でもな……
「おっせぇんだよ!!」
銃声が鳴り響く前に目の前のクズを手加減なしで殴り飛ばしてやった。
犯人はそのままぶっ飛んで、店の対角線上に飛んでいった。
「な、何が起こっ――」
「ウッセクズ!」
そのままの勢いで近くにいる奴を4人潰す。すると犯人の1人がマシンガンのようなものを取り出した。
……なんでそんなんもってんだよ。
「くたばれクソガキ!」
犯人が連射を始める。
まぁ俺には当たらないが、俺がよけた流れ弾が他の客に当たらないように移動する。
辺りから聞こえるのは悲鳴。待ってろよ、全員まとめて助け出してやる!
「チッ!すばしっこいやつめ!」
犯人がリロードの動作に入る。
よっしゃ、これを待っていた!
俺は一気に距離を縮める。
だが、犯人のリロードは思ったより速かった。銃の扱いに慣れてんのね。
犯人がマシンガンを向けると同時に、俺は地面に落ちている、ハンバーグの鉄板プレートを拾う。
すかさずそれを盾にし、狙撃をしのぎながら銃を破壊、犯人の顔面に蹴りを入れる。
近くの野郎を2人撃破。
残り2人。
近いのは、女の子を人質にとってるあいつか。
すると背後から、1人の少年がオレンジジュースの入ったガラスコップをもってこそこそしている。
次の瞬間、その少年――義之は、中身を犯人の顔面にぶちまけた。
「ぶほっ!!」
「光雅!いまだ!」
「ナイス義之!」
犯人の顎にアッパーをお見舞いし、女の子を抱え、救出。ってあれ?顔が赤い?風邪か?
「うわっ、なにすんだ、はなせ!」
振り返ると義之が最後の1人に捕まって、銃を突きつけられている。
チッ!クズが!
「義之、待ってろ、今助けるからな」
「テメェ1人で何ができる!このクソガキ!」
どいつもこいつもクソガキクソガキ……。
「ああ、すぐにこの茶番を終わらせてやるよ。」
「やれるもんならやってみろ!」
「≪能力束縛(パワーオフ)≫!」
左手から連なった鎖が放出される。まぁ、俺以外に視認できないよう魔法で細工してるんだけどね。
鎖が犯人の体を捉えると同時に、犯人は身動きが取れなくなる。引き金にかかっている指も動かない。
「勝負あり、だな。ほら、義之、こっち来い」
「あ、ありがと。」
「な、何が起こってやがる……!」
「さぁ、何が起こったでしょう?」
その瞬間、背後から強い殺気を感じた。
振り向いたら、潰した男の1人が銃を人質だった女の子に向けている。
往生際の悪い……!
俺は右足に全力を込め、一気に女の子に近づく。
だが、犯人の発砲は速かった。
俺は女の子を抱きすくめると同時に、魔法で≪反射鏡(リフレクター)≫を瞬時に創造する。
球筋を変え、自分が下になるように近くの客席に滑り込んだ。
「……大丈夫か?」
「う、うん……」
まだ顔が赤いぞ?やっぱ風邪かな?
なら、さっさと終わらせる。流石に面倒だし、やり方に腹が立ってきた。
再び≪能力束縛(パワーオフ)≫を使用し、男の銃を使用不能にする。
「ひぃぃぃぃ……た、助けてぇぇぇ……!」
周りから見たらこれ、大の男が子供に見下されて命乞いしてる光景だよな、これ。
「……助けて、だと?」
こいつ、ふざけてんのか?
「おいテメェ、ちょっと歯ァ食いしばれよ……」
「……いぃ、いいいぃぃ……ぃぃいぃい……!」
「そこで少し……」
ゆっくりと足を上げて、狙いを外さないように頭の上にセットする。
「頭冷やしやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
――ドガン!!!!!!
犯人の頭は、床に埋まっていた。
周りからは歓声や拍手、安堵のため息、泣き声が聞こえる。
俺は腰が抜けて座り込んでいる女の子に話しかける。
「大丈夫?」
「え、えと、ありがと……」
その時――
「光雅!」
「光雅くん!」
「光雅お兄ちゃん!」
「光くん!」
家族の皆様が俺に詰め寄ってきた。
「光くん、無茶しすぎだよ!みんなずっと心配してたんだからね!」
「ごめんなさい……」
確かにただの子供があそこまでやれば、奇跡だとしても無理したと思われても無理はない。
「「「じゃあ、O☆HA☆NA☆SHIするから、ちょっとこっちおいで」」」
「ちょ、ちょっと、引っ張らないで!ってか誰か助けてぇ~~~!」
「あは、あははははは……」
~???side~
あの子、光雅くんっていうんだ……。かっこよかったなぁ。
「あら、あの子のこと、かっこいいって思ってるんでしょ?」
「ふぇ!?」
「まぁ、またどっかで会えるだろ。そのときにちゃんと恩返ししないとな」
「う、うん、そうだね……」
その時が、本当に来ればいいな。
その時には、友達になって、一緒に遊んで、そして――
「さあ、ななか、かえりましょ」
「……うん!」
私を抱いて滑り込んだとき、あの子の瞳が蒼くなったの、綺麗だったな。
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3人からのお説教は2時間にもわたりました。
今日ってホント厄日だよな……。
「光くん、ちゃんと聞いてる?」
「は、はいぃ!」
はぁぁぁ~~。