10.「開闢」
――何も見えない。
――何も聞こえない。
ここはどこだろうか。
長い間こうしていたような気がするし、逆にほんの一時だったのではないかとも思ってしまう。
今まで、俺は何をしていたのだろう。
分からない。
ただ――
俺の使命。
そうだ。俺は、――だった。
それを思い出した時、全ての記憶がフラッシュバックする。
膨大な量の情報を一度に頭に叩き込まれるかのように、衝撃が俺を襲う。
ここはどこだろうか。
きっと、全てが終わった後なのだろう。
そして、今一度俺の意識が戻ったということは、再び、“始まってしまう”のかもしれない。
手を動かす。
しかし、まったく動かない。
代わりに、手のひらに、微かな刺激を感じた。
俺は、壁に貼り付けにされているのだろう。
腕と同様、足も動かないようだ。
始まってしまうのなら、もう一度『抑制』しなければ。
だが、体がまったく動かない。
始まってしまう。
あの、混沌とした世界が。
あの、秩序乱れた悲しみの日々が。
止めなければ――どうやって?
誰か、俺の代わりに。
――オマエノカワリニナルニンゲンナド、ソンザイシナイ。
誰だ、俺に話しかけてくるのは。
――ナルホド、スベテヲワスレテイルヨウダナ。
そういうわけではない。
大体の状況は把握した。
でも、細かいところが分からない。
ここはどこだ?
何故俺はこんなことになっている?
――シルヒツヨウハナイ、オマエハココデ『モノガタリ』ノオワリヲナガメテイルガイイ。
まさかお前……。
『執筆の代行者』を手に入れたのか?
――モウイイダロウ、サラバダ。
――『エイユウ』ヨ。
このままでは拙い。
全てが、終わってしまう。
何もかもが無駄になってしまうその前に。
――リンクさせてやる。
全ての力を振り絞り、顔を上げ、目を見開く。
その瞬間、何もかもが、繋がった。
平和な世を、巻き込んでしまうかもしれない。
だが、こちらが滅びてしまえば、いずれあちらも消し飛んでしまう。
きっといるはずだ、すべてを救う、『救世主』が。
その時、俺は、1人の青年の『物語』を、上書きしてしまった。