10.「開闢」

2012年12月19日 18:14

――何も見えない。

――何も聞こえない。

ここはどこだろうか。
長い間こうしていたような気がするし、逆にほんの一時だったのではないかとも思ってしまう。
今まで、俺は何をしていたのだろう。
分からない。

ただ――

俺の使命。
そうだ。俺は、――だった。
それを思い出した時、全ての記憶がフラッシュバックする。
膨大な量の情報を一度に頭に叩き込まれるかのように、衝撃が俺を襲う。

ここはどこだろうか。
きっと、全てが終わった後なのだろう。
そして、今一度俺の意識が戻ったということは、再び、“始まってしまう”のかもしれない。
手を動かす。
しかし、まったく動かない。
代わりに、手のひらに、微かな刺激を感じた。
俺は、壁に貼り付けにされているのだろう。
腕と同様、足も動かないようだ。

始まってしまうのなら、もう一度『抑制』しなければ。
だが、体がまったく動かない。
始まってしまう。
あの、混沌とした世界が。
あの、秩序乱れた悲しみの日々が。

止めなければ――どうやって?

誰か、俺の代わりに。

――オマエノカワリニナルニンゲンナド、ソンザイシナイ。

誰だ、俺に話しかけてくるのは。

――ナルホド、スベテヲワスレテイルヨウダナ。

そういうわけではない。
大体の状況は把握した。
でも、細かいところが分からない。
ここはどこだ?
何故俺はこんなことになっている?

――シルヒツヨウハナイ、オマエハココデ『モノガタリ』ノオワリヲナガメテイルガイイ。

まさかお前……。
『執筆の代行者』を手に入れたのか?

――モウイイダロウ、サラバダ。

――『エイユウ』ヨ。

このままでは拙い。
全てが、終わってしまう。
何もかもが無駄になってしまうその前に。

――リンクさせてやる。

全ての力を振り絞り、顔を上げ、目を見開く。
その瞬間、何もかもが、繋がった。
平和な世を、巻き込んでしまうかもしれない。
だが、こちらが滅びてしまえば、いずれあちらも消し飛んでしまう。
きっといるはずだ、すべてを救う、『救世主』が。

その時、俺は、1人の青年の『物語』を、上書きしてしまった。