6.つかの間の平凡?

2012年10月28日 18:55
放課後、生徒会の仕事の手伝いをしてから、8時くらいまでさくらさんの仕事を手伝って、そのままさくらさんと帰宅。以下はそのときの様子。
 
「光雅くん、今日は本当に助かったよ。ありがとう♪」
 
「いや、まぁ、アレですよ。さくらさん、これまでに行事にはあまり参加できなかったんでしょう?だから、せっかくのクリパなんですから、ぜひ参加してもらいたいな、って思いまして」
 
「も~、光雅くんのそういう優しいところ大好き♪」
 
さくらさんが俺の腕をホールドしてくる。その顔は。
……完全な少女だった。
学園長として有名じゃなければ、社会常識的にかなり背徳的なシチュエーションだろう。
 
「さくらさん、えっと、だからどうしてこうなるんですか……?」
 
朝、音姉にも同じ事をされたような……。
 
「家族愛の表現だよ♪」
 
「家族でもこういうことは滅多にしないんじゃ……?」
 
「光雅くんは、こういうことされるの、……嫌?」
 
不安げな声で、上目遣いで、潤んだ瞳で訊ねてくる。
……やっぱ少女だ。
 
「いや、別に嫌ってわけじゃないですけど、ちょっとスキンシップ激しすぎません?」
 
「どーして?音姫ちゃんも似たようなことしてるみたいだし、それに、ボクと光雅くんの距離はこれが正しいんだもん♪」
 
「そうですか……」
 
まぁ、悪くない。俺、なんか最近、心のどっかで寂しさを感じてんのかな。
ったく、まるでガキじゃないか。らしくねぇ。
人の温かさが、心に沁みる。
誰かが隣にいるって、嬉しい。
そうしていると、いつもの芳乃邸に到着した。
 
「「ただいま~」」
 
玄関にはきれいに並べられた音姉と由夢の靴、適当に脱ぎ捨てられた義之の靴があった。
 
「あ、光雅兄さん、さくらさん、おかえりなさい」
 
「おかえりなさーい」
 
「にしても、お前もなかなか大変だよな~」
 
「まぁ、確かにいそがしいが、色々あって楽しいぞ?」
 
「そっか、じゃあクラスの出し物はなるべくこっちでなんとかするから、光雅は学園全体のサポートに回れよ」
 
「いや、大丈夫だよ。あ、でも、やっぱ放課後の準備とかあまり参加できなくなるかもだけど、その辺は任せた」
 
「本当に、ありがとうね」
 
「うん、ありがとう♪」
 
なんかそこまで感謝されると照れちまうじゃん。ということで。
 
「ところで、飯は?」
 
話題を変えて、ちょっと気分転換を図る。
 
「ああ、今日は音姉だよ。」
 
「うん、これからお世話になるから、張り切って作っちゃった♪」
 
「あの、さっきから台所からいい匂いがして、おなか空いたんですけど」
 
由夢が、もう我慢できないと言いたげに、そんなことをのたまった。
うん、確かに腹減ったな。
 
「そうだね。じゃあ、晩御飯にしましょ」
 
んで、いつものように喉かな団欒だったのだが……。
 
「ところで光くん、今日、どうしたの?」
 
「ん?何が?」
 
「お昼に水越先生に呼び出されてたよね?」
 
「あー、そういやあれなんだったんだ?」
 
「そうですよ、天枷さんと何があったんですか?」
 
「あまかせ、さん、って誰?」
 
「今日うちのクラスに転校してきた可愛い女の子です」
 
可愛い、のところを分かりやすいくらいに強調しやがった。
 
「可愛い、女の子、ねぇ……」
 
「お前、またフラグ立ててきたのか……」
 
「はぁ~、義之もついに渉と同系列に成り下がってしまったか……」
 
たしか、エリカとぶつかったときに渉も似たようなこと言ってたな。
 
「何!?しまった……」
 
かなり落ち込んでしまった。だが、話を逸らそうとしても追及は止まない。
 
「で、何があったの?」
 
「いや、ちょっと仕事を頼まれただけだよ」
 
秘密にすべきところはぼかしておいたが、あながち間違ってはいない。
 
「ふ~ん、天枷さんと一緒に?」
 
あ~、もう、なんか面倒になってきたな……。どうぼかしていくか。
 
「なんか知り合いっぽかったよね?天枷さんと」
 
「知り合い?今日転校してきたばかりなのに?不思議だよ~」
 
っていうか、なんで俺尋問受けてんだろ。別に女の子1人と知り合っただけじゃん。
……まぁ、色々訳ありな少女なのは否めないが。
 
「で、なんで――」
 
「天枷さんと一緒に――」
 
「水越先生に呼び出されて――」
 
「仕事を頼まれたわけ?」
 
……。
あんたら打ち合わせしてただろ。
なんでそんなに息ぴったりなんだよ!?
いくら姉妹だからっていってもそこまで息を合わせるのはかなり難しいぞ!?
仕方ない、追及を許さないようにちょっと脅かしてやるか。
 
「別に俺は話してもいいんだけど、それはもう身の毛もよだつような体験で、あの杉並ですらビビりまくってたぜ?それでも聞くのか?あ~あ、俺は音姉たちが気絶して病院搬送されるのを見たくは無いなぁ……」
 
ハリウッドスターも吃驚の名演技をしてやった。
 
「……」
 
「……」
 
信じ込んでしまったようで、由夢も音姉もがくがくぶるぶる震えて声を出さなくなった。
さくらさんなんかコロコロ笑っている。
義之は、俺関係ないしとでも言いたげに1人で箸を進めている。
 
「まぁ、全ては杉並に昨日ある場所に誘われたのがきっかけなんだけどな――」
 
「べ、別にいいです!もういいです!」
 
「うんうん!」
 
「そう?俺的にはちょっと話したかったんだけどなぁ」
 
よし、作戦完了。
肉じゃがの最後のジャガイモを口に放り込み、白ご飯をかきこむ。
 
「ごちそうさまでした。音姉、おいしかったよ。美夏の件は、また時期が来たら話すよ」
 
立ち上がって、居間を出ようと思って、思いついた。
 
「そうだ、義之、後で俺の部屋に来てくれる?」
 
ジェスチャーを使う。意味、『重要情報共有』。
いつだったか、俺と義之の間でのみ通じるジェスチャーをつくった。
 
「うん?了解」
 
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風呂に入り、自室に戻って、例の分厚い資料を取り出す。
いくら美夏の正体を隠すためとはいえ、俺1人では身が持たない。
そこで、義之なら文句を言いつつも、協力してくれるだろう。
だから義之を部屋に呼んだ。
そう、義之には美夏の正体を話す。
ちなみに舞佳先生には許可をとった。安全性の考慮の結果だ。
 
――こんこん。
 
ドアノックが聞こえる。
 
「どうぞ」
 
義之が入ってきた。
 
「話って?」
 
そう問われたので、取り出した資料を見せる。
 
「さっきの話。美夏がいったい何者で、俺とどういった接点があるか」
 
そういうと、義之は不思議そうな顔をした。
 
「へ?なんかありそうなのは何となく分かるけど、何で俺だけ?由夢と音姉には話さないの?」
 
「由夢はまず美夏のクラスメイト。事情を知っていると、立ち回りが困難になる。あと、音姉は生徒会長の身であるがゆえに、あまり協力は仰げない」
 
「ちょ、ちょっと待って。話が全く見えないんだが?」
 
それもそうか。説明が足りなさ過ぎる……っていうか、まだ何も話してないな。
 
「結論から言えば、あいつはロボットだ。μみたいなもんだ」
 
「ロボットって、あれが!?」
 
そりゃ、驚くだろうな。事実、俺も初めて見たときは、あまりの人間くささにロボットであることを少し疑ったくらいだ。ましてなんの事情も知らない義之が一目見ただけでこんな話をされても信じないだろう。
 
「これを見ろ。舞佳先生から貰った資料だ。」
 
H‐MA06型 ミナツ。動力源はソーラーパワーとゼンマイ。これまた吃驚な情報じゃねぇか。
8時間に1度、バナナミンを摂取しないと熱暴走を起こす。ちなみに、バナナミンとは、バナナから摂取できる栄養素である。人工知能を安定化させるために必要らしい。
 
「だからバナナ食ってたのか……」
 
「ああ。んで、あいつはそのバナナが嫌い。それとあいつは極端に人間を嫌っている。お前も授業で習ったろ?ロボットに関するいろんな問題」
 
「ああ、多少はな」
 
「で、バナナを食べないと活動できないように開発したのは人間。酷過ぎるとは思わないか?」
 
「そりゃな。んでも、なんでそんなやつが風見学園にいるんだよ?」
 
「ああ、昨日な、昼休み俺と杉並でどっかに行ったろ?そのときに俺が偶然あいつを起動させちまったんだよ」
 
「そういうことだったのか」
 
「それで、舞佳先生に頼まれたのは、あいつの正体がばれないようにすること。つまり、あいつのフォローだ」
 
「そっか。それなら全てがうまく繋がるな。で、俺にも手伝ってほしいと?」
 
「そういうこと。お前なら安心して任せられる。お前はきっとクラスの出し物以外は暇だろうしな」
 
「そりゃ悪うございました」
 
「まぁ、頼めるか?」
 
「善処はしてみるよ」
 
「ありがとな」
 
こういう時、義之は本当にためになる。
それなりに優しいから下級生に人気があるなんて専らの噂だ。
 
「気にすんなよ。お前も色々と忙しいだろ?お前は音姉同様、1人で背負い込む癖があるし、音姉と違ってSOS出さないから手助けのしようがなかったからな。頼ってもらえて嬉しいよ」
 
そういってもらえるとありがたかった。
持つべきものは信頼できる同志ってやつか。
 
「そっか。まぁ、頼んだよ」
 
「ああ」
 
結束の証として、拳を軽くぶつけ合った。