01.出会い シャルル編
さて、とりあえずなんて挨拶すればよいやら、こんにちは、か、こんばんは、か、――いや、はじめまして、がしっくりくるだろう。
この物語の始まりは、二年前、とある青年ハンターがロックラックにて一人の女性と出会ったこと、で間違いないだろう。
そこに、この物語の主人公はいた。
その男は、氷牙竜の真っ白で堅固な甲殻と、同じく真っ白で、柔軟な毛皮、そしてアクセントに鋭い琥珀色の牙を使った、ベリオSシリーズの装備を身に纏い、そしてその背中には、闇に同化してしまいそうなほど黒い刀と、純度の高い、透明で穢れから程遠い氷で錬成された刀を引っ提げていた。
何故二本か――それは初見の者は誰でも感じる疑問なのだが、それこそが彼の特徴であり、彼が彼であり続けるための、いわば彼自身の『魂』とも言えるのだとか。
彼がこのロックラックのハンターが集う酒場に着いた時、狩人たち特有の鋭い眼光が彼を射抜いた。
しかし彼はそのような視線は幾度となく経験しており、慣れた足取りでクエストを受注しに向かった。
「上位☆8」
彼は水色のギルドカードを提示する。
そのギルドカードに刻まれた名前は、『キース・ウォルト』。
「かしこまりました。現在、以下のクエストを受注できます」
「それじゃ、この渓流のジンオウガ二頭で」
クエスト受注の紙を受け取り、早速船に乗って渓流に赴こうとする――のだが。
一人の女性に声をかけられ、思わず振り返る。
「あなた、これからジンオウガ?」
「ああ、そうだが?」
女性は全身をナルガSシリーズで統一し、その背中には巨大な剣斧を背負っている。
恐らくジンオウガのスラッシュアックス。それも最終強化までしている。
「ラッキー☆ 一人でいくのダルかったから、誰かが受注するのを待ってたのよね」
「そっか、来るか?」
「……もしかしてキミ、あたしのこと知らない?」
「いや、知ってる。ここロックラックでかなり有名だろ。『金糸の斬撃姫(ゴールド・スラッシュクィーン)』だったか」
「ふぅん」
『金糸の斬撃姫(ゴールド・スラッシュクィーン)』、その名はロックラックで知らないものはいない。そしてその正体が、目の前にいる女性、シャルル・フォードである。
『金糸』の名を冠する通り、彼女の長く美しい金の髪は、彼女のナルガ装備の胸元まで零れていた。
「キミ、型破りな装備ね」
「オレ専用だ。真似するなら金取るぞ」
「しないわよ、使い辛そうだし」
そのたったの一言二言で、彼女はキースに興味を持った。
「キミ、なかなかのやり手ね」
「ああ、このクエストも君がいなけりゃ一人で行ってたさ」
「強がりじゃなきゃいいけど」
そしてここで、一つの話が決まった。
「それじゃ、このクエストでどっちが先にジンオウガを倒せるか勝負しない?どうせ二頭いるし」
「面白そうだな、乗った」
こうして、凄腕同士の戦いが幕を開けた。
さて、場所は変わって渓流に到着。
キャンプで軽く準備をし、お互いにスタンバイできたのを確認する。
「準備はいいか?」
「いつでもいいわよ」
「それじゃ、よーい」
「「ドン!」」
運動会のかけっこのような合図で、両者は別々に獲物を探し始める。
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シャルルは、渓流でもジンオウガに遭遇しやすいポイント、つまりは川の流れる地点に来ていた。
そこには、やはりというべきか、予想通りに奴はいた。
大量の雷光虫を呼び寄せ――
強靭な四股で地面を踏みしめ――
その巨大な体躯で、フィールドを駆け回ることから――
『無双の狩人』と称された、雷のモンスター、『ジンオウガ』。
「早速お出ましね……」
背中のスラッシュアックス、ゴアフロストアンバーを展開させ、狩人同士は睨み合う。
そして、雷の狩人は、威嚇に――これでもかというほど吼えた。
普通のハンターなら耳を塞いで動けなくなるところだが、彼女は前転回避でそれを消す。
そしてその驚くべき回避術で一気に獲物に接近、その巨大なスパイク状の刃を、頭に叩きつける。
そのまま斬撃を繰り返し、すぐに右前足の爪を破壊することに成功する。
それと同時に怯むジンオウガに、更に斬撃を浴びせる。
たまらなくなったジンオウガは、ひとっとびでシャルルから距離をとり、ローリングしながらジャンプして、二つの雷の玉をこちらに飛ばしてくる。
シャルルはこれを冷静に回避、すぐに接近する。
しかしここで、ジンオウガは新たな行動に出る。
その場で唸り始め、更に多くの雷光虫を身に纏わせながら同時に雷を纏い、その強さを増していく。
しかし、それこそが彼女にとっての最大のチャンスだった。
接近した彼女は、その剣斧でジンオウガの腹部を突き、振り上げて切り下ろすと同時に、斧モードから剣モードに切り替え、その状態で得物を振り下ろした。
だがまだだ。そこから剣を引き、スイッチを押して一気に突き出す。
突き刺さった部分から、冷気がどんどん溢れ出す。
――属性開放突き。
そして最後に爆発音を残し、剣斧は斧モードに戻る。
ジンオウガはその一突きにかなりのダメージを負ったようだ。
「さて、そろそろ部位破壊狙いましょうかね……」
漆黒の美女は不敵な笑みを浮かべ、アイテムポーチに手を伸ばした。
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一方キースも、謎の祭壇で蜂がたかっているエリアに到着、そこでジンオウガと相対することになった。
「これじゃ、多分先越されるだろうな」
余裕そうな口をたたいて、ジンオウガが咆哮するのを遠くで聞き、相手の接近を待つ。
すると本能のままにジンオウガはキースに突進を食らわそうとする――が。
横跳びでこれを回避し、勢いで静止できないジンオウガを負い、スリップしているのを止めようとするジンオウガに対して、抜刀、一閃、更にもう一閃。
それでも痛がる表情を見せないジンオウガは、その強靭は前足で、ハンターを叩き潰す。
しかしこれも楽々回避、その後にできる隙を突いて、更に攻撃を加える。
「おいおい、張り合いがねーな!」
本来なら双剣でしか出来ないような攻撃の嵐を、いとも簡単に二本の太刀でやってのける。
そして攻撃で怯んだ隙に背後に回り、尻尾の攻撃に当たる。
急な痛みの場所の移動で、混乱するジンオウガ。
そんなことも気に留めず、キースは攻撃の手を緩めない。
しばらくするうちに――
ジンオウガの胴体から――
その雄々しい尻尾が――
――分断された。
「グギャァアアアアアアアアアアア!!!」
ジンオウガが苦痛に喘ぐ。
それでもキースは容赦はしない。淡々と獲物を斬り続け、確実にダメージを蓄積させる。
足にダメージを蓄積させた結果、ジンオウガはバランスを崩し、地面に倒れる。
そして、ここからが太刀の真骨頂――
――鬼人斬り。
しかも本来は一本の太刀で連撃を繰り出すものを、彼は二刀流である。
更にその一撃一撃は重く、鋭い。
華麗なる太刀捌きを見せ、フィニッシュに体を回転させながら、背筋、腕の筋肉、遠心力、全ての力を刀に集約し、鬼人大回転斬りをお見舞いした。
「そんなんじゃ、オレに静電気を掠らせることすら不可能だぜ?」
キースはいまだに余裕な表情で、怒りに燃えるジンオウガを見据えていた。