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54.追い縋る過去
2014年01月23日 14:56
約束のあの場所――かつて清隆たちがさくらとの再会を果たした、初音島最大の桜の大木に、少年少女は集った。
一面に広がる薄紅色の風景は、遠い過去の魔法の世界を彷彿とさせる。
蘇る、取り戻した記憶とその想い。
それぞれが胸の内に抱いたそれは、誰もが自分の中に閉じ込めたままで、外に表そうとはしなかった。
そよ風が少女たちの髪と共に、桜の花びらをさらっていく。
見上げる桜の大木に、全員が決意を新たにした。
「それじゃあ、始めるぞ」
龍雅のその言葉に、残りの7人が桜の木の幹に手を当てる。
6人ではなく、7人。そう、清
52.その笑顔に誓う
2014年01月23日 14:55
楽しかったか、と問われて、楽しかったと答えられる自分がいる。
楽しかったか、と問われて、楽しくなかったと答えられる自分がいる。
そんな矛盾を孕み、現実世界に興味を持ち、そして同時に失っていた。
どこまで行っても自分は全てを持ち、全てを凌駕し、超越する存在であると同時に、何も持たず、何も変えることができず、何よりも劣っていた。
矛盾を孕み過ぎた自分と常に対角線上にいた少女――芳乃さくら。
彼女はきっと、その両極端に立つことができず、常に彷徨い続けていたであろう。
しかしそれを是とし、それを幸せと捉えていた。
彼女は創り、そして終わらせることで自分の世界を得た。
53.その拳に握るもの
2014年01月23日 14:55
イタリア某所。
建物の中の小さな研究室に、1人の青年がいた。
空いたデスクの上には、何枚かの飾られた写真。そこには、その青年ともう2人、金髪碧眼の少女と、大きなリボンをつけた女性が写っていた。中には青年と女性が一緒に写っているものもあり、そちらの方が数が多いようだ。
青年は憂うようにその写真――スタンドを手にとり、愛おしそうに眺める。
写真の中の彼と彼女は、幸せそうに笑っていた。逆に、それを眺める青年の表情は、曇っていた。
「離ればなれに、なりたくなんてなかったのにな……」
諦め。今の彼を語るには、それだけで十分だったかもしれない
51.添い遂げる少女
2014年01月23日 14:54
風見学園での1日を終え、放課後にになり、龍雅は本日もいつも通り、公式新聞部の部室に顔を出す――はずだった。
しかしその足は、その目的地には向かず、どういう訳か彼は自然と階段を最上階まで上り、貯水タンクの上で横になって外の空気を吸っていた。
茜色の空を見て思い出していたのは、これまでの出来事。
――シグナスに育てられ。
――魔法学園でみんなと共に過ごし。
――恋人の前で命を散らし。
――弟と対立し。
――走馬灯の中で、自らの悲願を思い出した。
 
50.巡り合う悲しき運命
2014年01月23日 14:53
気が付けば全ての元凶は去っていた。
周囲の風景は、彼――シグナスと対峙する前と同じものだった。立夏も既に動いている。
何が起こっていたのかを一瞬で思い出すと、彼は桜の下まで走った。
それこそ、立夏を追い抜いてまで大事なことだったからだ。もちろん立夏が不審がったのは言うまでもない。
「さくら、今の覚えてるか?」
「え……うん」
しばらく混乱していたのだろうが、力強く頷いた。
清隆たちに、さくらと話があることを告げてさくらと共にこの場を1度離れた。
「龍雅くん、彼のこと、知ってるの?」
49.研究活動記録(後編)
2014年01月23日 14:52
シグナスは自身の『無』の力を使い、アカシックレコードに到達、そこで得た知識を利用して死後の世界、いわゆる魂を選別する空間へと立ち入ることまで可能とした。ここまでくれば彼の計画は、残るは彼の描いたシナリオを傍観するだけであった。途中で不都合なことがあれば修正、正しい方向に導くことが彼の役割。シグナス・ルーンはこの時点で神と同等の権利を得たのだった。
その力で上代龍輝を一度別並行世界へと流し込む。
その際にロンドン中の人間とリンクが切れて、黒龍の力は一時的に失われるが、それでも潜在的に眠ってはいるし、≪加速運動(アクセラレート)≫も無意識ではあるが健在だった。
こ
49.研究活動記録(前編)
2014年01月23日 14:51
1900年代初め、ロンドンには、特に名家の出でもなく、元々無名で、魔法使いの間で急速に名を広めた者がいた。
人々は口々に言った。
――彼は歴史に名を残すであろう才能を持っている。
――このような逸材は二度と現れないだろう。
――彼が魔法使いの世界をより良くしてくれる。
彼は希望の星であり、全ての魔法使いの夢を一身に背負ったものであった。
その魔法使いたちにとっての『光』のような存在の名は、シグナス・ルーンと言った。
彼は人々の期待に応えるべく、魔法使いの世界をよくするために様々な試行を繰り返
05.それでも僕たちは逃げてない
2014年01月04日 23:44
先に結論だけ述べておこう。少し遅れて始まった綱引きは、白組は完敗だった。
それはもう、ピストルの開始の合図が鳴った瞬間に、雪崩れ込むように向こうに引きずり込まれていった。僕もなんとか力になろうと足を踏ん張ってはみるものの、全く意味もなさず、地面に靴底の軌跡を掘りながらずるずると引き摺られていた。
結果、タイムアップのピストルの音を聞く前に勝負ありのピストルが鳴る。初戦敗退、これで午後の部は完全な暇人と化した訳だ。
そして昼食である。僕は早めに教室に戻っては鞄から弁当を取り出し、いつもの空き教室へと向かった。
扉を開けると、そこには先に森上さんが来ていた。
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04.残念だけどここから先は一方通行
2013年12月12日 15:27
轟雷の鳴り響く丑三つ時。
無限の土砂が空から降るように地を穿つ雨は、夜闇を更に暗く沈める。
人通りもなければ、車通りも全くない道路。
漆黒のレインコートを身に纏い、塀に沿って道路を歩く者がそこにはいた。
招かれざる来訪者。終わりを告げる者。俗称、死神。
足音も立てず、豪雨とその轟音に身をひそめ、淡々と冷たく前へと進む。この日、新たなる罪人を地獄の底に叩き落とす、断罪を加えるために。
雨に打たれながらも、しなやかに体の体重を移動させ、とある建物の塀へと登り、木を伝ってベランダへと上がる。要領よく音を鳴らさずに窓を割り、鍵を開ける。部屋の中へと侵入し、そこで
03.蜜月の赤面看病
2013年11月25日 00:18
天音桜火――――彼女は、乱闘事件の翌日、学校側から謹慎処分が言い渡された。
情報の出どころは単純なもので、彼女が殴り飛ばした連中の中に、羽ケ崎の生徒がいたということである。その男が学校側に報告し、彼女が学校生活に支障をきたすようになったのだ。
しかし、あの場には僕もいた。なのに僕は処分を受けることはなかった。きっと彼女が、天音さんが上手く情報を操ったのだろう。僕はやはり、彼女に守られてばかりだった。
その次の日、当然と言えば当然なのだが、天音さんは姿を現さなかった。
いつもの通り授業をサボって僕の携帯に連絡を入れるでもなく、放課後に例の空き教室に
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