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37.振出しに戻る

2013年11月05日 16:42
英嗣は光雅の通っている学園から、そこの生徒会長、朝倉音姫の拉致に成功する。 そして彼女を助けようとして、光雅もまた、それを追いかけた。 到着した廃工場で勝負を仕掛けることになったのだが、ここで計画は、作戦は成功した。 そう、光雅に眠る、その凶悪な力を覚醒させることに成功したのだ。 彼が生き延びることができた要因であり、これから彼の身を滅ぼしかねない力。 誰にも理解されない孤独と、何よりも力を欲する、力への渇望、そして、目の前の障害を、敵を一瞬にして葬り去りたいと思う破壊衝動が、彼を無限への高みへと登らせた。 それこそ、龍雅が以前から見抜いていた光雅の本来の力、

35.決別

2013年11月05日 16:41
それからはもう、毎日が楽しい日々だった。 学校のない日は、どこで何をしようとも、いつも輝夜と、隼翔と、光雅と、それから龍雅の4人で一緒だった。 光雅が積極的に先導して、隼翔が盛り上げて、輝夜が雰囲気に合わせて、そして龍雅が呆れながらついていく、それがいつも通りで、誰もがその日常を望み、満喫していた。 光雅はいつも見ていた。 嫌そうな顔で溜息を吐いた次の瞬間、苦笑いをする龍雅を――そう、龍雅が、笑顔を見せたのだ。 それはこの4人の時だけでなく、家庭でも、それは見え隠れしていた。 家族の誰かが龍雅に絡んだ時、その時は面倒臭そうに躱しながら話していても、別れる瞬間、その横

36.終焉への誓い

2013年11月05日 16:41
弓月兄弟は事件の生き残りということで、なるべくマスコミを回避しながら事情聴取を済ませ、ほとぼりが冷めるまでなるべく外出しないでいた。 ショックを最も受けたのは紛れもなく龍雅だったが、彼はほとんど家に帰って来なくなっていた。 光雅も目が虚ろになり、いつものような元気も、前向きさも全く感じられていなかった。 彼らの両親も何も言うことができず、ただ遠くで見守ってやることしかできなかった。 輝夜と、隼翔の葬式には、龍雅は参加しなかった。 何人もの啜り泣きが聞こえてくる中で、光雅は泣けなかった。 何も感じられなかった。 未だに彼らが亡くなってしまったのを受け止めきれていな

33.顔を上げれば

2013年11月05日 16:40
新しい家族ができた。 新しい名前を授かった。 2度目の生を受けたような、そんな錯覚を覚えた。 嬉しくなかったといえば嘘になる、が、それでも完全に違和感が拭い去れた、とも言い難かった。 新しい家庭に引き取られて、それなりにまともな生活を送っていた。 その中で龍雅と名付けられたその少年はやはり、どこか自分を、家族を見ていなかった。 彼が見ていたのは、やはり、いつまでも、空の向こうだった。   そんな、静かで、それでいて温かな家庭は、そのまま数年続き、いよいよ龍雅の弟である光雅も小学校に通うになり、それと同時に、龍雅も中学校に通い始めた。 とは言って

34.不本意な大騒ぎ

2013年11月05日 16:40
驚いたことに、輝夜は龍雅の家の割と近くに住んでいたこともあり、2人は家の前まで歩いていた。 これがきっかけで輝夜は龍雅の家の位置を記憶し、翌朝、龍雅が通学しようと家を出たら、玄関先に輝夜が立っていたことには龍雅も少々驚いた。 昨日の帰宅と同じように、龍雅はほとんど喋らずに歩いていた。 その斜め後ろを輝夜が様子を窺うように歩く。 仲がよさそうかといえば、そうでもない。 それでいて、やはり仲が悪そうにも見えない、なんとも言い難い雰囲気の朝の光景だった。 そこに乱入者が現れる。 背後から軽快な足音。 誰かがこちらに向かって走り寄ってくる。 音が耳に入ってきてか

32.曇り硝子の向こう

2013年11月05日 16:36
俺は、俺はこんなことになってたのか……   ――思ったよりも、動じないんだな。もう少し取り乱すかと思った。記憶はなくても、かつては結ばれた相手との別れだというのに。   確かにそうかもしれねェ。でも、それでも俺は、やっぱり覚えてねェんだ。   ――そうか。   もしこのビジョンが本当なら、ここから先が、『俺』の人生ってことか。俺の、どうしようもなくどうしようもなかった人生。   ーーーーーーーーーーーーーーーー   空を見ていた。 それでも、見えていなかった。 きっとその先に

31.舞い散る桜の中で

2013年06月03日 15:12
龍輝は車いすに乗せられ、リッカに押されて医務室を出た。 そして無言のままに船着き場までゆっくり向かい、そこで船に乗った。 2人とも個人用ボートはあるのだが、いかんせん龍輝の体が殆ど動かないので、リッカも一緒に船で移動することにした。 船の甲板で、少し話した。 会話は上手く繋がらなかった。 お互いに色々話を切り出そうとしたけれども、すぐに途切れてしまう。 リッカは、うっすらと感じていた。 もしかしたら、と。 だから、どうしても会話に集中できない。 もしかしたら、もしかしたら。 話したいのに話せないもどかしさが、更にリッカの心を締め付ける。 無言の龍

30.存在の消えゆく果てに

2013年06月03日 15:11
風見鶏に設置された、とある医務室。 そこにある個室のベッドに、龍輝は横になっていた。 医者曰く、3日経ってもいまだ眠り続けているらしい。 その側には、巴と清隆、それと姫乃がいて、見舞いに来ていた。 部屋に入ってからの、沈黙。 目の前に現実と、これからの不安と、恐怖に、声が出なかった。 姫乃にとっても、清隆にとっても、龍輝は頼りがいのある先輩で、清隆には、姫乃のために解決の糸口を見つける協力をしてくれた音があり、姫乃にも、昏睡状態に陥った清隆を助けてくれた恩があった。 それなのに、自分たちは、彼を救うことはできない。 自分の無力さに腹が立ち、何にも返せなかった

29.絶望を穿て

2013年06月03日 15:10
球体の立体型魔法陣の中、歪な微笑を浮かべて浮遊している、1人の青年、上代龍輝。 しかし、彼がリッカを見るその視線は、そして、リッカに語り掛けるその口調は、紛れもなく、ジル・ハサウェイそのものだった。   「ジ……ジル……!?」   何が起こっているのか分からない。 確かに今目の前にいるこの人物は、上代龍輝であるはずだ。 だが、何故彼からジル・ハサウェイが感じられるのか。   「ヒントをあげようか、リッカ。この子はね、龍輝くんであり、地上のみんなであり、霧であり、龍であり、そして、君たちでもあるんだよ」  

28.届かぬ声、届かぬ心

2013年06月03日 15:09
ここ数日、龍輝はまたしばらく生徒会室に顔を出さず、そして、何故か彼の自室にもその姿はなかった。 リッカたちは、言い方こそ悪いものの、彼が居場所がここにしかないことを知っていたため、彼の不在を訝しく思っていた。 とある朝、リッカは魔法使いとしての勘が働いたのか、嫌な予感を感じ、不安を抱きながら急いで準備をして寮を出た。 少し冷たい風を正面で受けながら、学校までの桜並木を全力で走る。 胸の内で速まる同機は、果たして酸素を全身に送るためのものか、それとも迫り来る何かに恐怖しているためのものか―― 校舎内に入り、ゆっくりと廊下を歩く。 不安である、それだけの理由で、周囲を極
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